研究内容

はじめに

熱エネルギーと熱物性測定をベースとした,基礎的な物性研究に軸をおいた研究を進めています.熱の問題は,応用面でも注目されるようになり,CPU・パワートランジスタ・新型電池などのエネルギー分野,LED照明パーケージ材料の熱マネージメントなどの先端分野で,開発競争が展開されています.私たちの永年にわたる経験と,そこから開発された手法と装置がこれらの分野で使われ始め,真の意味で工学研究の精華であると自負しております.持続可能な社会の発展を目指した多くの課題においても,熱の問題はますます正確な把握を求められており,新たな材料開発と計測技術が重要になると認識し,日々の研鑽を積んでおります.


装置開発と材料開発

1.温度波を用いた熱拡散率・熱伝導率測定法の開発

(キーワード)高精度熱拡散率測定,電子線リソグラフィー,誘電泳動,ISO

熱分析における交流法の特徴に早くから着眼し,最適なセンサーの探索を行いながら20年にわたり築き上げてきた温度波熱分析法は,熱拡散率測定法として高分子の熱物性のみならず、あらゆる材料に適用されるようになり,その成果は、国際標準としても採用されました.物性物理から実用まで,熱に関する現象の解明はさらに奥深く,研究対象もさらに広がっています.さらに,ミクロ・ナノスケールの高精度測定を目指しています.


2.非接触法・可視化技術を用いた熱イメージング法の開発

(キーワード)赤外線カメラ(Gallery 図1)・赤外分光可視化

次世代の熱分析法のひとつとして,赤外線波長域のイメージング化に取り組んでいます.輻射・分光双方のイメージング装置・解析アルゴリズムの開発を材料開発との関連から進めています.(研究プロジェクト参照)


3.新規熱分析法の開発

(キーワード) AFM, Raman, XRDとの複合化,TSC, TL, PAS 等

次世代熱分析法の開発方向のひとつに、複数の手法の複合化があります.温度波による熱拡散率測定法と種々の構造解析法を組み合わせることで,熱伝導現象の物理的な解明を目指しています。


4.放熱材・断熱材の開発

(キーワード)電子部品・建材・包装材・食品パッケージ

熱伝導性は,省エネルギー・環境負荷低減の観点から,材料開発において必須の物性となってきました。特に食品保存や建物の保温のための断熱性能,電子機器内部やエンジン部の放熱性が重要な開発課題となっています.(プロジェクト参照)


5.多層系の熱界面制御

(キーワード)ディスプレイ基板の放熱制御・薄膜フィルム・接着剤

界面においては熱伝導性の制御がさらに重要になりますが,従来薄膜に適した測定法が少なく,材料開発への展開が難しいとされてきました.精度良い測定法の提案をとおして、種々の材料設計へ展開しています.


6.相転移と熱伝導

(キーワード)分子性結晶・単結晶・液晶・医薬品・化粧品・食品

温度波法は,温度精度・感度に優れ種々の材料の1次2次相転移の測定が可能です.熱拡散率の相転移での変化は、新しい物理現象の解明に結びつきました.


7.細胞の熱解析

(キーワード)細胞融合・冷凍保存(Gallery 図2)・食糧保存

熱現象の解明は,医療・食品分野でも非常に重要です.私たちの開発した分析法をとおして,未だ定量的に解釈されてこなかった生命体にかかわる熱現象についても取り組みを始めています.